09 January 2011

2011 年頭所感

2010年は、グリーンウッドワークのさまざまな可能性を実感した年でした。

飛騨木工連合会の技能開発委員会のみなさんを対象に行ったスツール講座。まさか、家具業界のベテラン職人さんから研修を依頼されるとは思ってもみませんでした。生の木を人力で削るものづくりは教育的に大きな意義があることを、飛騨の匠も認めてくれました。

森林文化アカデミー、グリーンウッドワーク協会、ぎふ羽島ボランティア協会が共同で行った、障がいを持つ子と持たない子を一緒に交流させる連続講座。森の中でのものづくりは、人をなごませ、つなげる力があると感じました。

アメリカのドリュー・ランズナーさんを招いての椅子づくり講座。グリーンウッドワークを通じて国際的な交流が持てたことや、ボランティアスタッフのみなさんが大勢で講座運営を支えてくれたことに感激しました。

長良川鵜飼の籠をつくる石原文雄さんにお願いして始めた、竹細工の後継者育成活動。始めて見ると、人力で生の竹を割り編んでいく作業はまさにグリーンウッドワークそのものです。200種類もの生活道具をつくることができる石原さん。この技術と文化を残し、伝えなければと思いました。

2011年は、グリーンウッドワークをさらに広げ、深めていきたいと思っています。

いま、さまざまな社会問題が新聞やテレビで伝えられます。母親が孤立して育児を放棄したり虐待したりしてしまうこと。学校でのいじめに悩む子どもがいること。うつ病など心の病を抱える人が増えていること。若い人が仕事に就けないこと。孤独なお年寄りが増えていること。地域の森が荒廃していること。

今年は、こうした社会問題を意識しながら、ものづくりの力で貢献できることを探っていく年にしたいと思っています。

たとえば母親の孤立について。いまグリーンウッドワーク協会では、赤ちゃん用のスプーンづくりの勉強会を続けています。いずれは地域のお父さんやお母さんたち向けに、スプーンづくりの講座を開いていければと考えています。同じ年頃の子どもを持つ親たちが集まり、楽しくものをつくって交流する場ができれば、子育てのストレスや孤立感が少しでも解消されるのではないでしょうか。

子どもの問題について。いじめ問題は奥深いものですが、私たちにできることのひとつは、学校の中での固定的な人間関係とは異なる人のつながりを、学校の外につくってあげることではないでしょうか。グリーンウッドワーク協会の活動では、会員さんたちが子連れでやってきて親同士は木工作業に夢中になり、子ども同士は森の中で遊んでいる、という光景をよく目にします。異なる年齢、異なる小学校の子どもたちが一緒に遊ぶ姿を見ると、こんな場が社会にいくつもあれば、いじめも少しは減るのではないかと思います。
いずれは、グリーンウッドワークが学校教育に直接的に関わることもできると思っています。

2010年から始めた竹細工の活動は、当初は長良川鵜飼の鵜籠づくりの伝承が目的でした。しかし活動を始めるうち、この地域の竹の文化が丸ごとなくなりつつあることに気付かされました。竹細工職人がつくる200種類もの生活道具は、海外でつくられる粗悪品や、プラスチックなどの工業製品にどんどん置き換わっています。職人の数は減り、竹林も荒れています。
そこで、竹林の整備と竹の道具づくり講座を、地域の人向けに提供していきたいと考えています。たとえば竹林の整備。私たちもこれまで何度か練習用の竹を伐りに行っていますが、竹林での作業は清々しくて実に気持ちいいのです。数時間の竹林整備と、あたたかいスープなどを組み合わせれば、楽しい講座になること請け合いです。
竹細工の講座では、地域の人とほうきや箕などの掃除道具を作り、地域の学校などへ寄付してはどうでしょうか。学校の子どもと一緒に、ほうきを作る講座だってできるかも知れません。

こうした活動を通じて、社会にどんどん新しい仕事を生み出していければとも思っています。若い人の就職先がないのは不況のせいですが、高度成長期のような仕事はもう戻ってきません。新しい時代に合う仕事を、自ら生み出すしかないのです。森林や環境に関する分野には、これから環境税などの公的なお金や、企業の社会貢献活動(CSR)のお金が入ってきます。これらのお金は、先進的な事例を求めています。グリーンウッドワークで先進的な活動を行い、これらのお金で若い人の働く場をつくり、地域社会をもっと楽しく豊かな場にしていきたいと思います。

ものづくりやグリーンウッドワークが、社会の問題をすべて解決できるとは思いません。でも、ものづくりは楽しい。だから求心力があるのです。たくさんの人をつなぐ力になります。

2011年、大きな目標を見据えて、みんなで楽しく活動しましょう!